個人が建物を取り壊して土地を譲渡する場合の譲渡費用の留意点
個人が土地付き建物を売却する際に、建物を取り壊してから土地を譲渡するケースがあります。
その際の譲渡費用に関する留意点を解説します。
取り壊し費用と未償却残高は譲渡費用として計算する
不動産の譲渡所得は、売却金額から取得費と譲渡費用を控除して算出します。
取得費はその不動産を取得した費用(建物の場合は減価償却費控除後)、譲渡費用は譲渡のために支出する費用を指します。
建物を取り壊した後に土地を譲渡する場合には、その建物に係る取得費や譲渡費用はどのように計算するのでしょうか。
この場合、建物を取り壊した費用とその未償却残高の双方を譲渡費用として計算します。(所得税法基本通達33-8)
(取り壊した場合、建物部分の取得費はありません)
取り壊した費用はそのまま支出した費用が該当します。
未償却残高については、どこで把握すればよいでしょうか。
事業用の建物であれば、決算書に添付されている減価償却明細により未償却残高を把握することが可能です。
自己の居住用の建物のような非業務用建物であれば、別途未償却残高を計算する必要があります。
(建物の取得費 - 耐用年数の1.5倍の年数に対応する旧定額法の償却率で計算した減価償却累計額 = 未償却残高 )
ただし単に取り壊すだけでは譲渡費用にならない
取り壊し費用と未償却残高を譲渡費用として計算するために重要なポイントがあります。
それは、契約書上で建物を取り壊すことが譲渡の条件であることを明記することが欠かせません。
(通達上において取り壊しが譲渡のために行われたことが明らかであるとき、と規定しています)
譲渡につき、取り壊すことが条件でない場合には、
・事業用の建物であるときは、未償却残高を事業所得の必要経費に算入
・非業務用(自己の居住用の建物など)であるときは、家事関連費として所得計算上考慮されない
(ただし災害等に関連する取り壊し損失の場合は除く)
ことになります。
特に非業務用である場合には、譲渡費用にも必要経費や所得控除にもなりませんので注意が必要です。
おわりに
今回は個人が建物を取り壊して土地を譲渡する場合の譲渡費用の留意点について簡単に解説しました。
非業務用の建物の未償却残高を譲渡費用にすることができるのは、見落とす可能性があるため、注意が必要です。
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都築太郎税理士事務所/Tsuzuki Taro Tax Accountant Office
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