相続時精算課税制度を適用する前に知っておくこと
税制改正により2024年1月1日以降に相続時精算課税を適用した贈与について、
110万円の基礎控除が導入されました。
暦年課税の贈与と同様110万円までは贈与税がかかりません。
相続時精算課税制度はその名の通り、相続時に税金を精算する制度です。
相続が発生した際には過去に贈与した財産の価格を
相続税の課税価格に含めて計算します。
この際、贈与した財産の価額から1年あたり110万円を控除できることから、
節税方法の一つとして注目を浴びています。
(10年間贈与を続ければ1100万円の贈与税及び相続税の非課税枠ができます)
ただし同制度は一度適用をすると、撤回することができないため、
慎重な判断が必要とされます。
今回は相続時精算課税の適用を考えるにあたり、
留意すべき点を説明します。
適用要件が厳格
相続時精算課税には110万円の基礎控除とは別に、
贈与税独自の2500万円の特別控除があります。
これを適用するには、
・贈与税の申告書を提出期限までに提出
・相続時精算課税選択届出書を同提出期限までに提出
・贈与により取得した財産について控除を受ける金額を記載
の要件を満たす必要があります。
例えば、贈与により取得した株式の価額が、
基礎控除110万円以下であったと計算した場合において、
期限内申告書を提出していないケースを考えます。
後に評価したら300万円であったときは、
期限内申告書を提出していないため、
特別控除を受けることができません。
また、一つの贈与財産は期限内申告をし、
他の贈与財産を申告していなかった場合においても、
その申告していなかった贈与財産については特別控除を受けることができません。
適用後のリスク
贈与税には時効があります。
それは贈与税の申告期限から6年を経過した時です(悪質な場合は7年)。
意図せず贈与税の申告をしていなかった場合には、
贈与税は時効を過ぎれば、課税権はなくなります。
しかし、相続時精算課税を適用している場合には、
贈与税の申告有無に関係なく、相続税の課税価格に算入されます。
これは贈与があった事実を課税庁が立証できた場合には、
相続時精算課税適用してから相続発生時までの贈与については、
贈与税の時効とは関係なく、相続時に課税ができます。
・親子で株を持っている会社に親の貸付金の債務免除をして会社の株式評価額が上昇した
・親子間で不動産の低額譲渡を行った
・父を被保険者とした生命保険料を母が負担し子が生命保険金を受け取った
のように直接的に資金や資産の移動が伴わず経済的な利益を受けている場合(みなし贈与といいます)
にも、贈与税は課税されます。
たとえ贈与税の対象となることを知らずに贈与税の申告書を提出せず時効となっていても、
相続時に相続税が課税される可能性が十分にあります。
おわりに
繰り返しになりますが、相続時精算課税は一度適用すると撤回できません。
60歳から適用を開始し、80歳まで生きるとすると20年間と長期にわたります。
その間、仮に贈与により取得した財産について申告漏れがある場合には、
まとめて相続時に課税対象となります。
節税メリットだけではなく、デメリットについても考えておく必要があります。
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都築太郎税理士事務所/Tsuzuki Taro Tax Accountant Office
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