個人事業を廃業(法人成りを含む)した場合には経費の特例がある【廃業後に発生した経費は廃業年又はその前年の経費にできる】

所得を計算する上で、経費は原則として発生した年に計上します。

しかし個人事業を廃業(法人成りを含む)したときに、廃業後において経費が発生する場合もあるでしょう。

原則に通りに処理すると、廃業後に発生した経費は発生した年の経費になりますが、すでに事業を廃止しているため、事業所得はなく、経費になりません。

つまり経費が発生しているのに永遠に経費として計算することができません。

そこで、個人事業を廃業した場合には、特例として廃業年又はその前年の経費することができます。

今回はその特例について書いていきます。

どんな経費が対象か

基本的には廃業後に生じた事業に係る経費であれば対象となります。

例えば、廃業後に

・商品や原材料の棚卸資産を廃棄した

・事業用の器具備品を廃棄した、建物の内装を取り壊したなど事業用の固定資産の除却した

・売掛金が回収できなくなった

・廃業年の翌年に払うこととなる個人事業税がある
(見込みで計算して経費にします)

場合には廃業年にさかのぼって経費にすることができます。

どこまで経費にできる

次のうち最も低い金額を経費にできます。

1.廃業後に発生した経費

2.廃業年分の課税標準(株や不動産譲渡による所得などを除いて合算した所得金額)

3.廃業年分の事業所得

※廃業年分で経費にできない部分がある場合には、その前年にさらにさかのぼって経費にすることができます。
(さかのぼれるのは1年のみです)

例えば、廃業後に売掛金の貸倒が2,000,000円生じたものとします。

○廃業年分

1.貸倒 2,000,000円

2.課税標準 5,000,000円

3.事業所得 1,000,000円

もっとも低い金額は、1,000,000円です。

したがって、

3.事業所得 1,000,000円ー1,000,000円=0円

となります。

ここで生じた貸倒のうち、

2,000,000ー1,000,000=1,000,000円

が経費になっていませんので、さらに前年にさかのぼります。

○廃業年の前年

1.貸倒残額分 2,000,000ー1,000,000=1,000,000円

2.課税標準 4,000,000円

3.事業所得 3,000,000円

もっとも低い金額は1,000,000円です.

したがって、

3.事業所得 3,000,000円ー1,000,000円=2,000,000円

となります。

結果として、廃業後に生じた貸倒損失2,000,000円については、

・廃業年に1,000,000円

・廃業年の前年に1,000,000円

経費として計上したことになります。

手続き

廃業年の確定申告が未提出であれば、その提出する確定申告の事業所得の計算において廃業後に生じた経費を加えます。

すでに確定申告書を提出している場合には、更正の請求をします。

提出期限は、廃業後の経費が発生した日の翌日から2月以内です。

期限が短いので、提出もれがないよう注意しましょう。

おわりに

個人事業を廃業した場合の経費の特例についてご紹介しました。

なお本特例は、不動産賃貸を廃業した場合の不動産所得でも適用がありますので、対象となる場合には手続きをお忘れずに。
(ただし事業的規模(5棟10室基準)に限られます)

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都築太郎税理士事務所/Tsuzuki Taro Tax Accountant Office

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