特定の相続人に渡したい財産がある場合には生きている内に贈与する【相続時精算課税制度を利用する】

相続の悩みの内の一つが、「誰に何を財産を相続させるか」です。

相続人が複数いる場合には、相続争いが生じる可能性があります。

遺言書により財産を相続させる人を指定することも可能ですが、作成時からの時間が経過すると状況も変わることもあり、修正するのも手間がかかります。

そこで、渡したい財産については、生前に贈与する方法もあります。

今回は生前に贈与するメリットや注意点について書いていきます。

生きている内に贈与するメリット

・生きている内に確実に渡したい相手に財産を渡せる

例えば、相続人が妻と子供3人いる場合で考えてみます。

子供の内の1人が自分の土地の上に建物を建てて住んでいるとしましょう。
(建物は子供所有)

遺産分割では、その子供が住んでいる土地も、相続人間で分割することになります。

仮にその土地をその子供が相続しないと、次の相続以後において親族間で権利関係がややこしくなり、相続争いの火種となりかねません。

また、自社株を所有している場合においても、事業を承継させたい子供に全て渡すことで安定的に会社経営をすることができます。

しかし、他の相続人が取得することになれば、会社の意思決定に影響が出る可能性があります。

相続では自分の遺産を誰が引き継ぐか不確定な要素があります。

生前に贈与する方法であれば、確実に渡したい相手に財産を渡すことが可能です。

相続時精算課税を利用する

贈与は、

・暦年課税(非課税枠:110万円)

・相続時精算課税(非課税枠:2,500万円)
※令和6年1月1日からの贈与は非課税枠:110万円が追加されます。

の2種類があります。

特に土地や株式など比較的財産価値が高額である場合には、非課税枠が大きい相続時精算課税制度により贈与することで、財産を受け取る側にとっても贈与時の贈与税負担を減らすことができます。

注意点

・遺留分を侵害すると、遺産分割時にトラブルになる可能性がある

遺留分とは相続人が法定相続分の1/2の相続財産を受け取ることができる権利です。

生前に財産を贈与することで他の相続人の遺留分を侵害してしまう場合には、生前に財産をもらった相続人は他の相続人から遺留分の請求をされる可能性があります。

・土地の評価減の特例が使えない場合がある

先ほどの相続人が妻と子供3人の例で考えます。

仮に自分の土地の上に居住用建物を所有している子供が自分と同一生計である場合おいて、その子供がその土地を相続により取得した時は、土地の80%評価減(小規模宅地等の特例といいます)を受けることができ、相続税の負担軽減になります。

しかし、生前に贈与してしまうと、評価減の特例は使うことができなくなってしまいます。

・相続時に財産が値下がりしていると、かえって相続税が高くなることもある

相続時精算課税制度は非課税枠が多い分、相続税の対象となるというデメリットがあります。
(名前の通り、相続時に贈与税と相続税を精算する、という意味です)

そして贈与時の財産の価格を元に相続税を計算します。

贈与時より相続時の財産の価格が低ければ、相続税の負担が増えてしまいます。
(逆に贈与時の方が財産の価格が低ければ、相続税の負担軽減になります)

・相続時精算課税制度を一度選択すると、暦年課税に戻れない

相続時精算課税制度を一度選択すると、暦年課税には戻れないので注意が必要です。

ただし、相続時精算課税は贈与者ごと・受け取る人ごとに選択することが可能です。

例えば、

子供Aへの贈与:相続時精算課税

子供Bへの贈与:暦年課税

子供Cへの贈与:暦年課税

という方式が可能です。

まとめ

渡したい財産がある場合には生前に贈与することについて書いてきました。

話の内容としては、相続税の節税とは異なる視点の話です。

相続争いが起こらないように事前に渡したい財産を贈与することも選択の一つとして検討されるのも良いと思います。

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都築太郎税理士事務所/Tsuzuki Taro Tax Accountant Office

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