数年以内に複数の会社から退職金をもらった時の退職所得控除の計算方法
会社から退職する際には、退職金を受け取ります。
複数の会社に属している場合には、退職金の受給タイミングがかぶるときがあります。
その際、退職所得控除額はどのように計算するのでしょうか。
同一年に2か所以上から退職金をもらう場合
受け取る退職金をそれぞれ合算して収入金額を計上します。
そこから控除できる退職所得控除は
・いずれかの会社の勤務期間のうち最も長い期間を適用
・勤務期間が重複しない期間については加算
して計算します。
例えば、それぞれの会社の勤務期間が、
A社:2015年4月から2024年3月(勤務期間:9年)
B社:2017年1月から2024年12月(勤務期間:8年)
であるとします。
A社の勤務期間は9年間、B社の勤務期間は8年となり、長い方の9年を適用します。
また、B社勤務の2024年4月から2024年12までの8か月はA社の勤務期間と重複しないため加算します。
ゆえに
9年+8か月=10年(1年未満切り上げ)
として退職所得控除を計算します。
(控除額は、40万円×10年=400万円)
この場合、それぞれの退職金から別々に退職所得控除が適用されないため、納税者不利になります。
(A社退職金は40万円×9年=360万円、B社退職金は40万円×8年=320万円をそれぞれ控除できない)
そのため、1年ずらして退職金を受け取れば、それぞれの退職金で退職所得控除を適用できるのではと考えるかもしれません。
前年以前4年以内に退職金を受け取っている場合
しかしながら、退職金をもらった前年以前4年以内に退職金をもらっている場合について、計算方法の特例が設けられています。
・原則的に退職所得控除を計算(A)
・前年以前4年以内にもらった退職金の退職所得控除額を計算(B)
・既に適用した退職所得控除金額を差し引いた残額を退職所得控除として適用
((A)-(B))
つまり前年以前4年以内に退職所得控除として既に控除した金額は差し引いて適用することになります。
例えば、それぞれの会社の勤務期間が、
A社:2015年4月から2024年3月(勤務期間9年)
B社:2017年1月から2023年12月(勤務期間7年)
であるとします。
最初に2024年A社からの退職金に対する退職所得控除を原則的に計算すると、
40万円×9年=360万円
です。
前年2023年にB社からの退職金に適用された退職所得控除は、
40万円×7年=280万円です。
したがって、2024年の退職所得控除の金額は、
360万円 – 280万円 = 80万円
となります。
ゆえに、退職金を受け取る年を1年ずらたとしても、退職所得控除の適用額に制限がかかるようになっています。
退職所得控除余裕額がある場合
前年以前4年以内にもらった退職金の計算で、退職金が少ない場合には、退職所得控除枠が余る場合があります。
その場合には、実際に支給された退職金に基づき、退職所得控除として控除された金額を計算します。
先ほどの例で、B社からの退職金が100万円であったとします。
A社:2015年4月から2024年3月(勤務期間9年)
B社:2017年1月から2023年12月(勤務期間7年)、退職金100万円
最初に2024年A社からの退職金に対する退職所得控除を原則的に計算すると、
40万円×9年=360万円
です。
前年2023年にB社からの退職金に適用できる退職所得控除は、
40万円×7年=280万円です。
しかし、実際の退職金は100万円ですので、280万円の枠が余ります。
そこで、以下のように計算し、控除すべき金額を計算します。
100万円 ÷ 40万円 = 2.5年 → 2年
40万円×2年=80万円
したがって、2024年の退職所得控除の金額は、
360万円 – 80万円 = 280万円
となります。
おわりに
今回は数年以内に複数の会社から退職金をもらった時の退職所得控除の計算方法について解説しました。
退職所得は退職後の生活資金のために税金の負担が少なくなるよう考慮されています。
しかし過度な税負担を軽減することを防止するための規定もあるので注意が必要です。
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都築太郎税理士事務所/Tsuzuki Taro Tax Accountant Office
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