個人事業で赤字が出た場合、前年の黒字と相殺し還付を受けることができる【が法人税と比べてメリットが少ない】

先日法人税の欠損金の繰戻しによる還付の申請について記事を書きました。

個人事業で事業所得がある場合や不動産所得がある場合で損失が出た場合、同様の還付制度があるのか調べてみたところ、似たような還付制度(純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付)がありました。
(今まで実務で取り扱ったことがありませんでした)

今回は同制度について適用対象者や手続き、注意点などを書いていきます。

適用対象者・適用要件

適用対象者は青色申告者であることです。

適用要件は、
前年分の所得税について青色申告書を提出していること。

当年分の青色申告書を提出期限までに提出すること。
(やむを得ない事情がある場合を除く)

・青色申告書に還付請求書を添付して提出すること。

です。

ここは法人税の繰戻還付と大差ありません。

還付金額

下記の算式で計算します。

(前年の黒字所得×所得税率) − (前年の黒字所得と当年の赤字所得相殺後の所得×所得税率)= 還付金額

計算例として、

前年の黒字所得1000万円、所得税率20%(所得税は累進課税ですがあえて簡略的に設定しています)、当年の赤字所得△500万円

1000万円×20%–(1000万円–500万円)×20% = 100万円

100万円の還付となります。

法人税の繰戻還付と比べて、算式は異なりますが、実質的には同じ計算です。

注意点

・復興特別所得税は対象外であるため、損失を3年間繰越した方が税負担が減る可能性がある

現在、通常の所得税額に加えて、所得税額の2.1%かかっています。

しかし、この復興特別所得税は繰戻還付の対象外です。

来年以降3年以内で黒字になるのであれば、純損失の繰越控除(当年の損失を翌3年間繰り越すことで、翌3年間の黒字と相殺することができる)を適用した方が復興特別所得税の負担分も含めて軽減することができます。

・住民税は対象外で、前年の黒字以上に当年の赤字がある場合には、別途明細添付が必要となる。

法人税の繰戻還付と同様、住民税は対象外です。

今回、純損失の繰戻しをしてもなお、翌年以降に繰越す損失がある場合(前年の黒字以上に当年の赤字がある場合)には、市区町村へ明細の提出が必要になります。(国税と住民税で繰越す損失金額が異なるため)

法人の場合には、元々国と都道府県と市区町村にそれぞれ申告をしているので、通常の申告に加え、明細書を添付するのみで済みます。

他方、所得税は基本的に確定申告により国に申告すれば、所得データが各市区町村にいくため、そもそも自治体に申告する必要がありません。

しかし純損失の繰戻還付をすることで、損失の繰越額を書いた明細書を添付し、市区町村へ申告することになります。
(最大で3年間)

余計な手間がかかります。

まとめ

当年に生じた損失について、前年の黒字と相殺し還付を受けるか、翌年3年間の黒字と相殺するか、総合すると後者の方をおすすめします。

還付を受ける場合としては

・手間は承知で、少しでも手元資金を増加させたい場合

・当年で廃業する場合

などに限定されるでしょう。





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都築太郎税理士事務所/Tsuzuki Taro Tax Accountant Office

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