個人が事業用固定資産の損失に係る原状回復費用を支出した場合の取り扱い

個人が所有する事業用固定資産に損失があった場合、その損失は原則として経費になります。

一方、損壊した部分を修理するために支出した金額(原状回復費用といいます)は、経費なるのでしょうか?

一定額は資産計上(資本的支出に該当)

原状回復の費用は全額経費になる、

と考える方もいるかもしれません。

そのイメージは正しいですが、実際の計算方法は少し込み入っていますので、解説します。

支払った原状回復費用のうち、下記の算式で計算する金額(資産損失の基礎価額といいます)に達するまでは、資産計上します。
(資産損失の基礎価額を超える部分の金額は経費として計上)

資産損失の基礎価額=損失発生直前の未償却残高ー損失発生直後の時価

資産計上する理由は、事業用固定資産の損失を経費にする計算方法にあります。

事業用固定資産が損失を受けた場合、この「資産損失の基礎価額」が経費として計上されます。

経費に計上されるということは、固定資産の帳簿価額が減額されることを意味します。
(仕訳でいうと、「資産損失/固定資産」となります)

ここで原状回復費用を経費にすると、

・帳簿上の固定資産の簿価が損失として

・原状回復費用が費用として

二重で計上されている形になります。

原状回復をしているのであれば、損失で目減りした固定資産の帳簿価額を補填し、元通りの簿価にする必要があります。

そのため、損失として計上した部分相当額を再び資産として計上する取り扱いをします。
(原状回復費用のうち、簿価を元通りにしても、さらに超える部分の金額がある場合には、経費として計上します)

具体例

下記の例で計算方法を見ていきます。

・事業用店舗が損失を受けた

・損失発生直前の建物の帳簿価額:1000万

・損失発生直後の建物の時価:600万円

・原状回復費用:500万円

この場合、

資産損失の基礎価額=1000万ー600万円=400万円

損失/建物 400万

となり、400万が経費となります。

次に原状回復費用のうち資産として計上する金額は、

500万>400万円(=資産損失の基礎価額) ∴400万

建物/現金 400万

となります。
(これで建物は元通りの簿価1000万になりました)

最後に原状回復費用のうち経費として計上できる金額は、

500万ー400万=100万

経費/現金 100万

となります。

仕訳をまとめると、

損失/建物  400万
建物/現金 400万
経費/現金 100万



損失/現金 500万
経費/
(建物の帳簿価額:1000万)

結果として原状回復費用の金額を500万を経費として計上していることと差異がないことがわかります。

おわりに

今回は、個人が事業用固定資産の損失に係る原状回復費用を支出した場合の取り扱いについて解説しました。

原状回復費用の取り扱いは、計算方法が少し複雑なので注意を要します。

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都築太郎税理士事務所/Tsuzuki Taro Tax Accountant Office

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