確定申告前に利益損失の内部通算と損益通算の制度を確認する

12月に入り2023年の終盤に入りました。

個人の方は、所得見込みを計算し、利益をや損失を確定させて所得調整をする方も多いでしょう。

所得の計算上、どの所得の利益とどの所得の損失が相殺できるのか疑問に思う方もいると思います。

今回は個人の所得計算における内部通算と損益通算の制度について書いていきます。

内部通算とは?

損益を通算する制度の第1段階は内部通算と呼ばれるものです。

内部通算とは同一所得内での利益と損失を相殺することをいいます。

個人所得の分類は様々ありますが、例えば、

・宝石、骨董品の譲渡と事業用車両の譲渡に係る利益と損失の相殺(譲渡所得(総合課税))

・年金、副業や暗号資産の譲渡による利益と損失の相殺(雑所得)

・2以上の不動産を譲渡した場合の利益と損失の相殺(譲渡所得(分離課税))

と、同一所得内の利益と損失を相殺します。

損益通算とは?

内部通算後の次のステップは損益通算をします。

損益通算とは、各所得区分を超えて、利益と損失を相殺する制度です。

ただし、

・損益通算ができる損失

・損益通算する順序

において一定のルールがあります。

損益通算ができる損失

損益通算ができる損失は、

・不動産所得

・事業所得

・山林所得

・譲渡所得(総合課税)

の4つの所得から生じる損失に限定されます。

上記に掲げる所得区分以外から生じた損失については、他の所得と損益通算できません。
(雑所得に区分される副業の損失、不動産や株式譲渡による損失など)

損益通算する順序

損益通算する順序は下記の通りです。

1.総合課税の区分内で損益をそれぞれ通算する

第一段階として、総合課税に分類される下記所得をA,Bそれぞれの区分で損益通算します。

A.不動産所得又は事業所得の損失を経常所得から控除します。

経常所得とは、利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・雑所得の合計をさし、定期的に発生する所得を意味します。

B.譲渡所得(総合課税)の損失を一時所得から控除します。

譲渡所得と一時所得はたまたま発生するものなので、経常所得とは別に相殺をします。

2.A、B内で損益通算する

上記A、Bで損益通算できなかった損失については、A、B同士で損益通算をします。

例えば、

・Aの損失がある場合、Bから控除する

・Bの損失がある場合、Aから控除する

といった形です。

3.山林所得及び退職所得と損益通算

A、B同士で損益通算しても、なお控除しきれない損失がある場合には、

・山林所得

・退職所得

と損益通算をします。

これで不動産所得と事業所得から生じる損失の損益通算のプロセスは終了です。

4.山林所得の損失を損益通算

4番目はほとんど実務上では取り扱うことはありませんが、制度として存在するのでご参考までに紹介します。

損益通算の最後のステップは、山林所得の損失を、上記1-3の損益通算後の

・経常所得

・譲渡所得(総合)と一時所得

・退職所得

と損益通算をします。

なお、上記1-4で損益通算しても控除しきれない損失がある場合には、青色申告をしていることを条件として、翌年以降3年間損失を繰り越すことができます。

おわりに

今回は個人の所得計算における内部通算と損益通算の制度について書いてきました。

個人の所得計算は法人の場合と異なり、各種所得区分が分かれており複雑です。

ご不明な点がありましたら、ご相談ください。





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都築太郎税理士事務所/Tsuzuki Taro Tax Accountant Office

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