固定資産の交換の特例を適用すると有利な場合・不利な場合
土地や建物などの固定資産を売却するときに、対価として金銭を受け取るケースが多いですが、交換条件として固定資産を取得するケースがあります。
そんな時には固定資産の交換の特例を適用すべきか検討しましょう。
固定資産の交換の特例とは
固定資産の交換の特例とは、譲渡する資産と交換により同種の資産を取得することで、譲渡益を繰り延べることができる制度です。
譲渡後に同種の固定資産を取得するのであれば、実質的には変わらず所有している状態と変わらないため、課税の繰り延べが認められています。
適用要件
下記の要件を満たすときは、交換の特例を適用することができます。
1.次に掲げる固定資産で、交換対象資産が譲渡する資産と同一区分であること
・土地(借地権等を含む)
・建物(建物附属設備及び構築物を含む)
・機械及び装置
・船舶
・鉱業権
例えば、土地と建物の交換は同一区分の交換でないため適用対象外です。
※借地権と底地の交換は土地としての同一区分ですので、適用可能です。
2.所有期間
交換するそれぞれの資産の所有期間が互いに1年以上であること
3.用途
交換により取得した資産を譲渡直前の資産と同一の用途に供すること
例えば、
土地については、宅地、田畑、山林などの区分
建物については、居住用、店舗又は事務所用、工場用などの区分
で判定します。
4.20%基準
交換資産の価額の差額が、いずれか多い価額の20%以下であること
例えば、
・土地1億円(のほか交換差金2000万円)と土地1億2000万円の交換の場合には、
2000万円(1億2000万円-1億円)≦2400万円(1億2000万円×20%)
と価額の差額が20%以下であるため、適用要件を満たします。
・他方、土地1億円(のほか交換差金3000万円)と土地1億3000万円の交換の場合には、
3000万円(1億3000万円-1億円)>2600万円(1億3000万円×20%)
と価額の差額が20%を超えるため、適用対象外となります。
以上が適用要件です。
次に交換の特例を適用すると有利な場合、不利な場合について解説します。
適用すると有利な場合
交換による譲渡で譲渡益となる場合には、特例の適用が有利に働きます。
例えば、所有する土地A(時価1億円、取得費2000万円)と土地B(時価1億円)を交換するとします。
原則に従い譲渡所得を計算すると、
・譲渡収入金額は1億円
・取得費は2000万円
となり、8000万円に対して課税がされます。
(納税資金が必要となります)
一方、交換の特例を適用すると、譲渡はなかったものとみなされますので、8000万円に対する課税はされません。
土地Aの取得費2000万円が土地Bの取得価額として引き継がれます。
適用すると不利な場合
・交換による譲渡が譲渡損となる場合
かつ
・同年に他の不動産について譲渡益が出ている場合
には交換の特例を適用せず、譲渡損と譲渡益を相殺する方が有利です。
例えば、
・所有する土地A(時価1億円、取得費2億円)と土地B(時価1億円)を交換
・かつ他の不動産の譲渡で譲渡益5000万円が出ている
とします。
交換の特例を適用すると、譲渡がなかったものとみなしますので、譲渡損1億円(時価1億円ー取得費2億円)はないものとされます。
土地Bの取得価額は土地の取得費2億円を引き継ぎます。
つまり土地Aの含み損が土地Bの取得価額として繰り延べられてしまいます。
次に土地Bを譲渡する時まで含み損を実現することができません。
一方原則に従い譲渡所得を計算すると、
交換による譲渡は、時価1億円-取得費2億円=△1億円
となります。
ここで、他の不動産による譲渡所得が5000万円ありますので、
交換による譲渡損1億円と相殺することができます。
おわりに
今回は固定資産の交換の特例を適用すると有利な場合・不利な場合について解説しました。
交換の特例が有利に働く場合には、積極的に適用を検討していきましょう。
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都築太郎税理士事務所/Tsuzuki Taro Tax Accountant Office
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