海外の口座から日本の口座へ贈与による送金があった場合、その送金は国内財産?国外財産?

海外の口座から贈与により日本の口座へ送金するケースがあります。

その場合、その送金の所在地について、

・送金元の口座の所在地

・送金先の口座の所在地

いずれで判断するか。

今回は海外の口座から日本の口座へ贈与による送金があった場合、その送金は国内財産に該当するか、国外財産該当するかについて書いていきます。

送金手続き完了時点での財産の所在で判定

財産の所在について、相続税法10条4項では、

金融機関に対する預金、貯金、積金又は寄託金で政令で定めるものについては、その預金、貯金、積金又は寄託金の受入れをした営業所又は事業所の所在

と規定しています。

ここから、

・送金元の金融機関なのか

・送金先の金融機関なのか

読み取ることが困難です。
(単に預金の預け入れをしている金融機関の営業所の所在地という意味合いです。送金は関係ありません)

そこで本事例とは逆の裁判例(国内から国外(アメリカ)へ贈与送金)ですが、判決の一部抜粋を記載します。 

相続税の更正の請求に対する通知処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成13年(行ウ)第231号)
 東京高裁:平成14年9月18日判決

しかし,本件のようにアメリカ合衆国に在住する者に金銭の贈与を約束しその履
行として電信送金の手続をとった場合は,受贈者の預金口座に入金されるのはいわ
ば時間の問題で,送金された金銭は贈与者の手を離れ事実上その支配下にない状態
になったということができる。法的,観念的にはなお贈与を取り消す余地はあり,
電信送金手続上送金依頼人が支払停止の指示をすることも可能であるが,電信送金
をする者の通常の意思としてはその手続を了した時に贈与に係る金銭は自己の支配
下を離れ受贈者がこれを受け取るのを待つ(何らかの事故で送金されないというよ
うな事態にならないことを願う。)というものであると考えられる。そうすると,
上記のような立場に立っても,受贈者の預金口座に入金された時あるいは受贈者が
支払銀行に支払を請求し実際に支払がされた時まで待たずとも,贈与者が送金の手
続を了した時に受贈者の贈与を受ける権利(贈与契約に基づく請求権)は確定的に
なったものということができる。
履行という概念は権利の確定との関連で相対的に
とらえるべきものであって,金銭の贈与の場合に受贈者の権利が確定したというた
めには,完全な履行があったこと,すなわち受贈者が当該金銭を現実に入手したこ
とまで要するものではないというべきである。
このように解することは前記租税実
務に反するものではないと考えられる(なおこの実務は納税者の経済的負担(実際
上の担税力)を考慮した扱いであるということもできる。)


つまり贈与者の送金手続きが完了した時点で実質的に贈与が履行されたものと考えます。

したがって、本判例では、贈与履行時の財産の所在が国内であると判断されました。

当てはめ

例えば、

贈与者:海外に住む親(外国籍で日本に住所を有したことがない)

受贈者:3年前より別表第1の在留資格により日本に住所を有する子(一時居住者に該当)

に該当する場合には、国内財産が贈与税の課税対象となります。
海外に住む親から贈与を受けた場合、課税の対象となるか?

この関係性において送金を行った場合、縦軸を贈与者の口座の所在、横軸を受贈者の口座の所在とすると、

贈与者/受贈者海外口座国内口座
海外口座国外財産国外財産
国内口座国内財産国内財産

と財産の所在を判定することになります。

おわりに

今回は判例を基に財産の所在を紹介しましたが、

贈与財産の所在をより明確にするために、

送金前に、書面やメールで、海外(又は日本)の口座のお金を贈与する旨を残しておくのも一つの方法です。

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都築太郎税理士事務所/Tsuzuki Taro Tax Accountant Office

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